アメリカ球界が見る「KOSHIEN-甲子園-」
「日本の高校球児は投げすぎだ」は本当なのか。
3年目を迎えた「休養日」。今だからこそ考えたい日本野球の在り方。
300勝投手、トム・シーバーの言葉
厳格な球数制限を採用するメジャーリーグにあっては、やはり、甲子園における勝利のための連投、多投は肯定されないようだ。
しかし、である。杉浦氏は『筆者もこうした意見はあって当然だと思っているし、若いうちからの過剰な投げ込みは将来において必ずしもプラスにならないという見方を否定はしない。しかし一方で、メジャー関係者において、甲子園の特性について肯定的な意見もあることは記しておかなければならないだろう。』と前置きをしつつ、日本野球界が評価される理由にこの「投げ込み」の存在があることも指摘するのだ。
『アトランタ・ブレーブスのブルペンコーチで、日本人投手では川上憲伸を指導したこともあるエディ・ペレスはこう語ってくれた。
「日本人投手は一般的に多くの球を投げるが、かつてブレーブスに所属した川上憲伸も同じだった。彼もいつもブルペンで100球以上を投げていたよ。そうする理由は分からなかった。ただ、アメリカでも昔の投手たちは多くの球数を投げて、それでもまったく怪我はしなかった。それが今では誰もが100球くらいしか投げず、それでも多くが故障離脱してしまう。昔のやり方、日本のやり方の方がベターなのかなと思うこともある。答えは分からないけどね」
現役時代は捕手として活躍したペレスが指摘する「昔のやり方、日本のやり方の方がベターなのかなと思うこともある」という意見は、メジャーにおいても決して珍しいものではない。同様の趣旨のコメントは、投手の球数を過保護なまでに制限する米球界で、ここ数年聞かれるようになっている。
特に、通算310勝を挙げて1960〜1970年代にサイ・ヤング賞を3度獲得したトム・シーバーの、
「球数制限やイニング制限をしき、投手を赤ん坊のように過保護に扱ってもケガは防止できない。一番の予防法はいかに投球フォームを洗練させるか。1960〜1970年代の大投手たちは投げ込みをしっかりしたことで、多くのイニングを投げられた。自身の経験談でしかないが、少なくとも現在の甘やかした方法で故障を防止できていない以上、新しい方法を試すべきではないか」
という指摘は、昨今の風潮を一喝して話題になった。シーバーは、投げ込みそのものを肯定し、必要と唱えたわけだ。